秋の風物詩・バンクーバー国際映画祭! 2016年度は、日本から塩田明彦監督が瀬戸康史主演映画『昼も夜も』とショートフィルム『約束』を引っ下げてやってきてくれました。

塩田監督は北川景子・錦戸亮出演『抱きしめたい』、妻夫木聡・柴咲コウ出演の『どろろ』(2007年)、伊藤英明・ミムラ出演の『この胸いっぱいの愛を』(2005年)ほか、多数の作品を世に送り出しています。

今夏、日活ロマンポルノ作品『風に濡れた女』がロカルノ国際映画祭での若手審査員賞受賞など、受賞歴も豊富です。映画界の第一線で活躍し、脚本家でもある塩田監督のゼロイチ(0→1)に迫ってみました!

塩田監督はどうやってプロの映画監督の道を切り開いていったのですか?

(助監督のポジションを経験した後)企業向け広告映像のアルバイトをしていて、1度映画の現場から外れました。それで現場に戻るためにシナリオの書き方を勉強してシナリオを書き始めたんですよね。20代後半、30代の前半くらいまではギリギリ喰えるか喰えないかくらいのシナリオライターではありましたね。

 シナリオ学校とかに通っていれば、すっと行ったんでしょうけど、独学で映画を見て勉強して、書くのが遅いシナリオライターで……。

 プロフェッショナルになる、監督になる道筋がわからないというのは、僕らの世代、誰もが感じていたことで……。

 僕が助監督を続けようとしなかった理由も、助監督を続けていたんでは監督になれないっていう雰囲気がすごく業界にあったんですよ。でもじゃあどうしたら監督になれるかっていうのもなくって。なんとなくたまに自主映画から入っていく人もいれば、まれに助監督からなる人もいるし、誰がどういう風に監督になったのかわからない状況ですよね。ちょうど端境期(はざかいき)だったと思う。

 

今は時代が変わって、もっとプロへの道のりが見えていたりしますか?

今は時代が変わって、もっとプロへの道のりが見えていたりしますか?

 今回のバンクーバー映画祭にもたくさん若い監督が来ていますけれども、自主映画で面白いものを撮れば道が開けるっていうのが、僕らの頃よりはるかに明確にある感じがしますね。

 

塩田監督が得意としていることはどんなことですか?

 脚本を書く中で、自分の書きたいものやオリジナルのものを書くというだけじゃなくて、与えられた題材をいかに料理して面白いものにするかっていう方法も学んだんですよ。

 必ずしも自分が撮りたい、書きたいと思ったものが面白くて、そうでないものがつまらないのではなくて、人から投げ与えられた企画でも、自分の中の思わぬ引き出しが開いて面白いものができることがあるってことが脚本書いていてわかったんです。

 だから僕はその後監督になってからも、自分のオリジナルの映画も作れば、テレビ局から依頼されたようなメジャーな原作ものの映画も平然と撮り分けているんですよ。それが僕の特色ではあるんですけれども、それが僕の評価を極端にしている原因でもあるんですね。

作品で万民受けしないようなクセのある内容を扱う中で、人からどう思われるかという心配はありませんでしたか?

 あんまり人目を気にはしないので。物を作っている人は気にしていないですね。

作品へのネガティブな意見に対しても気にせずにいられますか?

 基本的はいい意見だけ聞きたいですよ。人間ですからね。でも悪い意見聞くことも必要だったりしますよね。聞いて必ず役に立つかは、まあ、わからないですね。

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最近のYou tubeなどで個人が映像を上げていくといった一般の人たちの動きは、映像業界に何か影響を与えているように思いますか?

 100年かかってできてきた映画のイメージが全然違うものになってしまうことはないと思いますね。ここ40年近く「映画は終わった」と言い続けられていて、日本の映画産業も「もう終わった」「死んだ」と言われて10年以上続いています。YouTubeが広まって、これまでの映画と境目がなくなるだろうとも言われてるんだけれども、そうはならないだろうな。やっぱりメインストリームは残っていく気がしていますね。

これまでも海外の映画祭に出品されていますが、海外の人たちの感想を聞いてどんな所感を持っていますか?

 多くの監督が感じる最大のポイントは、世界中に同じような人がいるということです。

 ある映画を評価して、ある映画を評価しないっていう価値観を共有している人が世界中に一定数いるんですよ。

むしろ自分の国内に同じ価値観を共有できない人はたくさんいるんですよ。

 だから自分と同じ価値観を持っている人と出会えるかどうかは国境に関係がないということですね。国が違うと何かが変わるわけではないっていうことを発見していくんだと思う。

今現在、自分のオリジナル作品のアイディアも温めていますか?

 それはつねに、いくつか。

目を向けているテーマはそれぞれですか? それとも共通ですか?

 自分が何をやるのかは、そのとき何を思いついたか次第で……。結果として共通しているものはあるんだろうけれども、自分ではなるべく考えないようにしているんです。

 自分がこれを語るんだと決めると、自分で自分の発想に枠をはめてしまう。そうすると思わぬことが思いつけなくなるかなと。自分で何をやるのかは自分でもつねにわからないという状態をつねにキープしようかなと思っています。

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俳優さんのことを一つ聞かせてください。今回の映画『昼も夜も』で瀬戸康史さんのいいところを引き出すために行ったことはどんなことですか?

 瀬戸君はイメージとしては年上の女性に人気のある男としてデビューして、今もそういうイメージのキャラクターを投げられることが多いんですよ。でも僕の知っている瀬戸康史 本人は、もっと男っぽいんですよね。九州男児ですし。だから男っぽい瀬戸康史の感じを出したいという思いがあったんですよね。人に媚びた笑いをしない感じの、そっけないけど優しいみたいな役が似合っているのかな

バンクーバー訪問は2度目とのことですが、印象はどうですか?

 バンクーバー本当に落ち着いたいい街ですよね。自然に近いのがいいです。

スターツでは皆さんに自分の「挑戦」について尋ねています。塩田監督の中での「挑戦」についても聞かせてください!

 日本で映画を撮るというのはつねに一本勝負で次にどうなるか、まったくわからないんですよね。つねに新人の状態なんです。どんな映画であれ、その映画一本撮ることが挑戦と言えば挑戦なんですよ。

          *     *     *

<取材後記> 

答えにくい質問も次々投げかけて塩田監督を困らせてしまったインタビュアーPiyoでしたが(大汗)、舞台挨拶ではカナダ人司会者が「映画『約束』でヒゲ面の役者さんを主人公にしたのは、監督自身と関係がありますか?」といった質問で塩田監督を苦笑させていました(!) 

 ナイスボイスで温和な印象の塩田監督。監督のこれからのますますのご活躍を遠くから応援しています!!

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『昼も夜も』はこんな映画

 父の後を継いで郊外にある中古自動車販売会社を営んでいた良介(瀬戸康史)。良介の前に、ある日風変わりな女(阿部純子:旧芸名は吉永淳)が現れる。女は手付け金と言って中古車のドアを開け、勝手に車内で夜中まで眠りこける。放っておけない良介は彼女を新宿へと送って行く……。

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Piyo

カナダ・バンクーバーのお隣、リッチモンドからおかしな音が聞こえたら、それはPiyoの鳴き声かもしれません。カラオケルームが家にある生活を夢見ています。

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