魔法使いとの出会い

はりきってビクトリアに戻り、大学で音楽療法の学習をスタートさせた。

しかし、内容は障害者の人たちが対象で、自分の志向とにギャップを感じた。

今後どうしたらいいか、答えは出せないまま、情報を求めてバンクーバーへ。

スタバで働きながら、音楽とつながることを模索した。

 

 

そんな中、あるボイストレーナーの存在を知った。アメリカの有名シンガーの指導ノウハウを持つという。

その人の弟子に会って、一流の発声指導の話を聞いているうち、その人がすごく輝いて見えてきた。

 

声を変える魔法使いがいる、ここに!

 

興奮で体が熱くなった。迷わず師匠にボイストレ―ニングを申し込んだ。

レッスンを重ねるごとに声がどんどん軽くなっていった。

でも自分が出したい声はパワフルなサウンドだった。

 

この方法で合ってるんだろうか?

 

そんな疑問の解ける日が来た。ある時、声ががらっと変わったのだ。

積み重ねてきた練習の成果が一気に現れたようだった。その劇的な効果に驚いた。

 

この発声メソッドの仕組みがわかったら、もっと歌うのが楽しくなるに違いない。

自分もこんな指導をしてみたい!

 

そして師匠の所属するボイストレーナー養成の協会IVAに入会。ボイストレーナーの道はここから開かれたのだ。

 

留学先にカナダを選んだ理由は?

中1の時にバンクーバーに10日間 語学研修にやってきて、ホームステイして。そこの子供を見て驚いて。

自分の言いたいこと言って、やりたいことやってる。

そして好きな時間に寝てるからってグレてるわけでもなく、ちっちゃいのにすごい芯があるみたいな。自由にできるチョイスがある感じ。

「人ってこんな自由に生きれるんだ!」って思った。

それはすごいあん時の自分になくて欲しかったこと。

それからここで生きてみたいなと思うようになって。

 

海外に来たことで自分にどんな影響があったように思いますか?

何してたんだろな。自分、海外出てきてほんとよかったなと思ってて……。

親も厳しかったり自分も変わり者だったりして、 自由にさせてもらえなかった感じで。

でも高校で家を出て一人で考え事したり、友達と好きな時に遊んだりする時間が多くなって、

より自分が見えて成長できたところがあると思いますね。

 

実際にボイストレーナーとして仕事をスタートする、異国でのゼロからの出発という0→1の時点での不安はどうやって解消しましたか?

自分が時々教わっていたボイトレの先生が同い年なんです。でももう10代の頃からトレーナーをしていて。

その彼女が「コーは、2年半とか訓練してきた経験があるんだから教えるのに十分、大丈夫よ」って背中押してくれて。

それがよかったです。

 

生徒さんたちにどうなってほしいですか?

前向きな気持ちを持ち続けてほしいですね。歌うのって変わるのにすごく時間がかかる。

それに歌うのは 自分をさらけ出すようなものだし。

だからボイトレに行くのは、カウンセリングを受けにいくようなものだって言う人もいるくらい、声は精神的なものも関係しています。

なので、レッスンでは習いに来た人たちの小さいインプルーブメント(向上)を大事にして、

レッスンの後に気持ちよく帰ってもらいたいです。

確かに歌は自分をさらけ出しますよね。

でもコーさんのレッスンだと、すごくリラックスして恥ずかしくなく歌えます。

それはうれしいです。あとレッスンでは、楽器の練習のように順序立てて練習するのでなく、その人がなんでここに来たか、

どういう問題があるかっていうことにフォーカスしてます。

それでその人に声の変化の手応えを感じてもらいたいですね。

 

今まで音楽に対してスランプの時期はありましたか?

自分の歌に関してはスランプだらけ。なんでこんな声で歌ってるんだ、なんでこここんなに歌いにくいんだって。

何回トライしても喉が痛くなるだけで、それで1週間休んだりとか。

でもそのたびに理由が一つずつわかってくるんで、それも必要なことなのかな。

教えることに関しては、教えたくないなって思ったことは1度もないですね。それは大好きなので。

 

ボイストレーナーとしてのビジョンは?

自分は社会貢献できてナンボだと思ってる。

ボイストレーニングで声が変わっていくのは、体の中の筋肉を変化を重ねていくことで、

これって、人間的な成長とも似ているんです。トライして、すぐにできなくても、できるようになっていく。

歌うことや発声の指導を通じて、カウンセリングじゃないですけど、

その人が何かを見つける手助けができたらすごくいいなって思ってます。

 

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KO VOCAL STUDIO ボイストレーナー中村興一さん

京都出身。中学卒業後、カナダのブリティッシュ・コロンビア州ビクトリアの高校・大学に進学。留学当初に心の支えとなった歌の力を実感し、大学で心理学を学ぶ傍ら、音楽療法も履修。バンド活動から音楽にのめりこむ。バンクーバーに転居後、ボイストレーナーを養成するInstitute of Vocal Advancement のマスターティーチャーコースを受講。2013年にスタジオをオープンし、ボイストレーナーとしてレッスンを開始した。レッスンはスタジオでの対面レッスンのほか、スカイプを通じて日本、アメリカ、ヨーロッパなど、受講者の居住地を問わずに行っている。

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