そばにあるだけで、優しい気持ちになれる。輝く姿を見てい ると、自然と心が癒される。彼女のキャンドルに出逢う時、 誰もがそんな思いを引き出される。まるで、心のずっと奥で、変 わらず灯り続けていた光の存在に気づくように。

 

海の向こうでの、キャンドルとの出逢い

高校生の頃からキャンドルに惹かれ、留学先のオレゴンでも 見つける度に買い集めていたという直美さん。大ぶりのキャンド ルの強烈な香り、鮮やかな色使いは、10 代の少女を夢中にさ せるに充分だった。そんな彼女がキャンドル作りを始めたのは 2009 年。LA でのアパレル会社勤務を経て、日本へ帰国してか らのことだった。きっかけは「ずっと好きだったから!」と単純明 快。大好きな鎌倉で理想の工房を見つけ、早速通い始めた。「時 間を忘れて没頭しては、先生に心配されてました(笑)。最初に 作ったキャンドルはもったいなくて灯せなかった。でも『ちゃんと 灯してね』って先生に言われて」。生まれて初めて作ったキャン ドルに火を灯した瞬間、今までにない感動が湧き上がった。「キャ ンドルは灯して完成するもの、人の心を灯すものなんだというこ とを、そこで教えてもらいました」。それは、キャンドルをオブジェ として楽しんでいた直美さんの、大きな第一歩だった。

東日本大震災を体験して、見つけたもの

2011 年3月11 日、東北地方太平洋沖を襲った大震災。直 美さんは東京で、そのとてつもなく大きな揺れと恐怖を体感した。 「何の技術もない私は、寄付や節電に協力することが精一杯。 被災地のために色んな行動を起こす人がいるのに自分は…って、 すごく苦しかったんです」。何か自分にもできることはないのか?  そんな気持ちから、趣味で続けていたキャンドルに思いが至っ た。実際に灯りとしても役に立つだけでなく、アロマを加えれば リラックス効果もあり、簡単なマッサージもできる。「辛い思いを している人たちのために、もっと深くキャンドルを勉強したい!」。 直美さんはすぐにアロマアドバイザーの勉強を独学で始め、2ヵ 月で資格を取得。環境や人体に至るまで、さらに知識を広げて いった。震災をきっかけに、自分の使命を見つけた直美さん。「本 当に回り道をしたけど、これが、ずっとやりたかったことだったん だって気づきました」。

バンクーバーに導かれて

そして、2011 年10 月。ご主人の仕事をきっかけにやって来たバンクーバー。この街にはまるで、直美さんをキャンドル作りへと向かわせる大きな力が働いているようだった。日本ではコスト的に手が届かなかったソイワックスや蜜蝋も、ここでは手軽に手に入る。「習い始めた頃は、色や形を自由に作ることのできるパラフィンキャンドルに夢中でした。でも独学で勉強するにつれ、灯した時の効果にも目を向けるようになりました」。大豆から抽出したソイワックス、ミツバチが巣を作る時の分泌液を原料とする蜜蝋は、どちらも自然から生まれた素材なので、空気を浄化し人と環境にも優しい。しかし、天然の素材だからこそ、デリケートな部分もある。「一番大切なのは温度。温度の調節を少しでも間違えると、すべて台無しになってしまいます」。試行錯誤しながらも、自分のキャンドルが人目に触れるにつれ、友人から「キャンドルを売ってほしい!」という声がかかるようになった。

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お友達のイメージでとオーダーされたキャンドル

「『自分が作るものを商品にするなんて』ってずっと断っていた んです。でもこの街に来て、いい機会だからやってみようって」。 最初に入った注文は、「私のイメージのキャンドルを作って」と いうもの。今までになかった注文に直美さんは戸惑った。その人 の人柄や生活などのイメージを膨らませ、色や形をまとめ、時に 香りを加えていく。「最初は不安でしたが、やってみると楽しくて。 何より、受け取った人が『こんなのができたんだ!』って喜んでく れるのが本当に嬉しかった」。そんな彼女が、キャンドル作りに 込める3つの想いがある。「まず、見た瞬間『素敵!』って感じ てくれること。次に、灯した時、リラックスしてくれること。最後に、 『また灯したいな』と思ってくれること」。新しい作品を作る時に は、寝ることも忘れて試作を重ねるという直美さん。「集中しす ぎて、よく主人に心配されます(笑)。でも、何度失敗しても、『苦 しい』って思うことは一度もないんです」。

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人気の3段キャンドル。手前がソイワックス、奥が蜜蝋。好きな文字を刻印できる

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スマイル柄がかわいい♪ そのまま灯しても、水に浮かべても◎な蜜蝋キャンドル

この春にはキャンドル作りのワークショップにも挑戦した。第1 回目は、キャンドルの道へと進むきっかけにもなった東日本大震 災の追悼キャンドル作り。「まさか自分が教える立場になるなん て考えたこともなかったので、すごく緊張しました。でも、人に 教えることで、逆に多くのことを学んだいい機会でした」。それぞ れに『Pray for Japan』のプレートキャンドルを乗せ、出来上がっ た作品たちを囲んで、被災地への祈りを捧げた。また、最近で は子どもたちへのキャンドル講座も開いたという。「まず英語が通 じなくて四苦八苦しましたし、常に細かいところに注意を払うの で、大人に教えるよりもずっと難しくて…。だけど、みんな心か ら楽しんでくれてたので、本当にやってよかったって思いました」。

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キャンドル講座のワークショップ。キャンドルを制作し、東日本大震災の追悼に

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ワークショップで作ったカップケーキキャンドルとドライフラワーキャンドル

バンクーバーでの様々な出逢いが、直美さんのキャンドルを進 化させていく。さらにこの夏は、キャンドルナイトヨガやクラフト 展への出店など、また新しいチャレンジが待っている。「バンクー バーは自然が豊かなので、例えば森の中にいたりすると、『ここに、 こんなキャンドルを灯してみたい!』というインスピレーションが よく湧きます。そういう時に思いつくキャンドルは、すごくシンプ ルなんですよね。形にこだわったものではなく、主役である森を 引き立てるような…。人の部屋に置くものも同じで、その人の空 間や生活に寄り添うものを作っていきたいと思うんです」。そんな 彼女が立ち上げたブランドの名前は『noemi-candle』。光り輝く、 というラテン語の語源を持つキャンドルにちなんで、作り手であ る自分の名前をラテン語にした。「『noemi』を調べてみると、宇 宙で703 番目に発見された小惑星の名前でもあるんです。『703= ナオミ=noemi』だ!って運命を感じて(笑)、このブランド名に 決めました」。

自らの存在を炎に変えて、美しく輝きながら溶けていくキャンドル。その光を見た時、人の心もまた、溶け合ってひとつになる。ひとつ、またひとつ、バンクーバーから世界へ。愛、希望、癒し、言葉にするだけでは伝わらない、だけどとても大切なことを、『noemi-candle』は教えてくれる。

※この記事は2012年 6月下旬号「Oops!」に掲載されたものです

 

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川崎 直美

1982年10月5日生まれ。横浜市出身。オレゴン、LA などの海外生活を経て、2011年10月よりバンクーバー在住。ソイ・蜜蝋を中心としたキャンドルの受注制作を始め、キャンドル作りのワークショップや、ヨガとのコラボレーションなど、多方面で活躍中。http://www.noemi-candle.com

About The Author

Star☆tS 編集長 - 言葉の魔術師

兵庫県明石市生まれ。言葉のお仕事師。夢見がちなこども時代、激音と妄想まみれな思春期、販売・事務職など迷走OL時代を経て、大失恋をきっかけに晴れてコピーライターに。2007年、サンタモニカへ移住。2010年、バンクーバーへ移住。ブランディング、コピーライティング、インタビュー記事執筆などの他、絵本、小説、エッセイなど、アーティストとコラボした作品も創作中。最近ぐっときた言葉は「愛は光の速度の二乗」。 カナダ留学エージェンシー カウンセラー

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