バンクーバーと湘南茅ヶ崎、海の街をつないだ“友情神輿” 
 
この夏のカナダデイパレードで最も注目されているのが、お神輿を中心に日本の伝統文化を伝える『晩香波櫻會』「日本文化の心を、このバンクーバーの地でも伝えていきたい!」という想いを胸に、まさに “ゼロ” からのスタートで結成された櫻會。その情熱は、湘南・茅ヶ崎まで届き、やがて、かけがえのない友情と、世界にたったひとつのお神輿を生むことになった……。

インタビュー後半では、櫻會のお神輿に秘められた“挑戦”と“友情”のストーリーを、晩香波櫻會代表・清野健二さんにお聞きしました。

 
 
 

『櫻會』のお神輿には、素晴らしいエピソードがあるとお聞きしましたが……。

 

櫻會の活動に想いをよせてくださる皆様方との出会いすべてが、大切なエピソードですが、その中でも、特に印象的なのが神奈川県茅ケ崎市で唯一の神輿職人、中里康則さんとの出会いです。

これは僕たちが櫻會を結成する前の話です。僕は以前違う団体で神輿を担いでいました。

神輿の事を少しでも多く知りたいと数年前に尋ねたのが中里さんだったんです。

 
 

2017年1月、中里さんのご自宅において半纏を受け取る。

 
 

神輿職人っていうと、頑固ないぶし銀のおじさんが作務衣着て……というイメージがあったんですが……。

 

初めて彼の工房を訪ねた時の事なんですが、木を切ったり、釘を打ったりする音の中にROCKギターのフレーズが交ざっていたんですよ。僕、もともとがROCKなんでギターの音とかに直ぐ反応しちゃうんです。「なんで神輿の工房にROCKフレーズが??」って思って中を覗いてみたらピンクのシャツ着た若い方が、いたんです。それが中里さんだったんです。
 
後から知ったのですが、中里さんはLUNASEAというバンドのドラマーの真矢さんの神輿を制作した方で、それ以来ずっと交流を続けているそうです。
 
会った瞬間に、「同じにおいがする」と感じました(笑)。

ご自身も湘南の神輿団体を率いる中里さん。日本全国、世界でも神輿文化を伝える活動をしている。

その時に彼が話してくれたのが、「神様の里帰り」の話。
 
中里さんの生まれ育った実家の隣が神社なのですが、その神社は約200年前に京都の松尾大社から御霊分けされた御分社なんです。
 
地元の神様は、200年も親と離れ離れで京都と茅ヶ崎で暮らしているんだと言うんです。
 
「人間だって、離れて暮らしていたら家族と会いたくなる。神様だって同じだろう。だったら家族に会わせてあげよう!」
 
となって、仲間と共に神様を神輿に乗せてお里帰りさせたエピソードを話をしてくれたんですよ。
 
これは、口で言うほど簡単な事ではありません。最初は仲間にも大反対されたそうですが、彼はやり抜いちゃったんですよ。
 
「この人の心意気はすごい!!」と、僕は感動しました。
 
彼の神輿は日本各地から引き合いがありますからあちこち飛び回っていて、昨年2016年は茅ヶ崎と姉妹都市のハワイにも呼ばれて神輿を担ぎに行っている。伝統を守りながらも常に前向きに、お神輿の魅力を発信し続けている人。
 
「彼のような神輿會をやりたい!」とずっと思っていたので、櫻會を結成する時に、相談役に就いてくれる様にお願いしたら、喜んで引き受けてくれました。
 
昨年11月、櫻會の結成報告イベントを日系センターで行ったのですが、中里さんも日本から駆けつけてくれ神輿についての講演も行ってもらいました。

日系センターにて、櫻會結成発表と湘南のお神輿職人、中里さんの講演会。多くの人が聞き入った。

 
 

素晴らしい講演だったそうですね。

 

はい。彼の様な人物を、僕達だけで独占するのではなく、多くの方々に感じて欲しかった。彼の熱い思いがみなぎる良い講演でした。

 

そこから櫻會の活動が始まって……。

 

「じゃあ始めよう!!」と言っても、問題は山積みでした。
 
組織作りから始まって、一番大きな問題が神輿製作でした。あちこち走り回ったけど、資金が思った以上に集まらない。神輿制作の話が頓挫しかけていました。
今年2017年のカナダディパレードに出ると決めていましたから、「こうなったら、木でもダンボールでもいい、自分で作るしかない!」って思って中里さんに相談したんです。
 
そうしたら、こう言ってくれたんです。
 
「僕は初めて来たバンクーバーで様々な人達と出会った。会う人達の多くが僕の事を歓迎してくれ、何だか昔からの友達に再会した様なとても懐かしい幸せな気持ちになった。だからバンクーバーの街のために、僕の神輿を奉納(プレゼント)させて欲しい」
 
驚きました。彼の製作する神輿は、数百万円以上はします。本物の職人が作る、本物の神輿。しかも、この街のために作られるオリジナルの神輿……。
 
喉から手が出るくらい、欲しくて欲しくて仕方がない。だけど、簡単に「いただきます」とは言えませんでした。とてもじゃないけど、お返しができない。申し訳なさすぎる。そう伝えると、「とにかく受け取ってほしい。これは、自分からのお願いだから」と……。

 


中里さんご自身が、櫻會の活動やミッションに共感されたからこそなんですね。

 

そうですね、本当に感謝です……。彼の、バンクーバーの街の皆さんへ貢献したいという想いが強くあったので、ありがたく受け入れる事にしました。

 

完成が楽しみですね!(2017年6月現在、完成したお神輿は日本からバンクーバーへの旅路の途中!)

 

はい。基本は茅ヶ崎スタイルの相州神輿なんですが、デザインなどはお任せしています。職人が情熱を入れて作ってくれてるものですし、何年もの付き合いで信頼関係ができてますので彼の思いのままに制作してもらってます。

 
 

櫻會の繁栄を祈って掘られた鶴。中里さんの想いが込められている。

 
 

今年5月には完成予定です。お宮でご祈祷と初担ぎをしてから、船に乗せてバンクーバーに送ります。
 
夏には中里さんとその家族、本場茅ケ崎の担ぎ手さん達が海外初の『湘南神輿』を担ぎにバンクーバーの街へやって来ます。バンクーバーの皆さんに本場の本場の湘南神輿を見てもらえるなんて考えただけでもワクワクします!

 
 

お神輿が完成した5月。深夜まで旅立ちの手伝いをしてくれた湘南の神輿仲間たち。最後には感極まって涙を見せる人もいた。

 
 

「櫻會」での活動を始めて、ご自身がどう変わったと思いますか?

 

毎日の生活が『自分自身への人間修行』って考える様になりました。“地域の宝”となる神輿を管理する會の代表として、「自分自身がそれに見合う人間へと成長しなければ」と考える様になりました。

 
神輿って『神様の乗る輿』ですから。自分自身の心と人間を磨いて、中里さんが製作してくださった神輿や、皆さんの気持ちに恥じない人間になりたいって思っています。

 

「櫻會」での活動を含め、海外で生き抜くための “流儀”を教えてください。

 

前に向かって、先ずは一歩を踏み出してみる。
壁にぶつかっても、仲間を信じて進み続ける。……これで何とか続いてきています。

 

これから、「櫻會」を通して、挑戦していきたいことはなんですか?

 

今見えている道を一歩一歩を大事に進んでいけば、その時々で色々な事が現れてくると思っています。自分達がどうしたいかというより「天が僕達にどんな役割を与えてくれるのか」、それを皆で楽しんでいきたいです。

 

これから、櫻會神輿のお披露目となる7月にかけて、忙しくなりますね!

 

やることがいっぱい(笑)! 湘南の神輿が、世界で始めての奉納、担がれるわけですから。茅ヶ崎でも地元の新聞や、ローカルTVでも盛り上がってくれています。だから、バンクーバーでも、すごいことにしなきゃいけない!
 
担ぎ手やボランティアさんは、いつでも募集しています。日本人でも、ローカルの人でも、誰でも大歓迎!
 
カナダパレード当日は、やっちゃん(中里さん)と、気合の入った茅ヶ崎の担ぎ手たちも盛り上げてくれます。ぜひたくさんの人に参加して欲しいですね。

 
 

2017年5月、松尾大社での完成式典。神事のあとの初担ぎ。

 
 

最後に、「海外で挑戦したい」と思っている人に、メッセージをお願いします。

 


とにかく、一歩踏み出しましょう!! 自分の思いにブレーキをかけない事です。
 
前に進むと、大変なことはいっぱいある。傷つくし、自分自身も打ち砕かれる。だけど、そこから這い上がってきた過程が、本物の実力になる。失敗する時間がある。傷ついてもやり直しができる。それは、若者の特権です。一歩踏み出して、壁にぶち当たってください。それが、自分の人生の糧になっていく。
 
そして、始めた時の純粋な想いを持ち続けること。そうすると、自然といい人たちが集まって、助けてくれる。それは間違いない。慢心して、心が曇るといい波長は生まれない。自分への戒めも込めてですが、感謝と謙虚な気持ちは、いつも忘れないようにしています。 
 
ぜひ、がんばってください。

 
 
 

前回のインタビューを読む

 

 

晩香波櫻會からのお知らせ

150周年カナダデーパレードを、櫻會と一緒に盛り上げませんか?

お神輿の担ぎ手、ダンサー、パフォーマー募集中!(6/24締め切り)

ご連絡・お問合せは以下のメールアドレスまで 

arisa00vancouver.sakurakai@gmail.com

今後のスケジュール

6/24(土)説明・神輿甚句練習会

7/1(土)神輿譲渡式・予行練習

7/2(日)17:00よりカナダディパレード参加

ウェブサイト
http://www.vancouversakurakai.com/

Facebookページ
https://www.facebook.com/vancouvermikoshisakurakai/

About The Author

Star☆tS 編集長 - 言葉の魔術師

兵庫県明石市生まれ。言葉のお仕事師。夢見がちなこども時代、激音と妄想まみれな思春期、販売・事務職など迷走OL時代を経て、大失恋をきっかけに晴れてコピーライターに。2007年、サンタモニカへ移住。2010年、バンクーバーへ移住。ブランディング、コピーライティング、インタビュー記事執筆などの他、絵本、小説、エッセイなど、アーティストとコラボした作品も創作中。最近ぐっときた言葉は「愛は光の速度の二乗」。 カナダ留学エージェンシー カウンセラー

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