第二回 田辺哲平_ PHOTOGRAPHERの”原点”と”ゼロ→イチ”ポイント Photo by Mikako Chiba Photography Q:Photographer 哲平さんの「原点」となった「ゼロ→イチポイント」とは? 「人を撮ることによって楽しい空間を共有すること」が、自分にとってすごい幸せなことだと気づけたこと。 それから、「アナログが好き」と気づけたことです。 _フリーランスの「フォトグラファー」として、バンクーバーで活躍なさっている哲平さん。哲平さんが撮っている写真のジャンルについて教えてください! 基本的には、“人”。自分は人を撮るのが好きなので、ポートレートやプロフィール写真、ウェディングフォト、ファミリーフォトなど、特にジャンルは絞っていません。 _初めから人を撮るのが好きだったんですか? 27歳の時にワーキングホリデーでバンクーバーに来て、それを機にカメラに興味を持ち始めたんですけど、最初は街の風景を撮っていました。 _最初は街を撮っていたんですね!どうして風景写真からポートレートに変わったんでしょう? 基本的に人と喋るのが好きなんだと思います。 人とコミュニケーションをとって、人の写真を撮るのが好き。英語は当時全然できなかったけど、街中で海外の人に話しかけて。撮らせてもらった写真を本人の了承を得てFacebookなどのSNSに載せたら喜んでもらえた。その経験も大きいですね。 撮影の裏側 _哲平さんが写真に「面白さ」を感じたのはどんなところですか? カメラ自体はデジタルだけど、人を撮る作業自体は、意外と「アナログ」なんですね。そこが好きだなと気付いた。 _「写真を撮る作業はアナログ」とは、具体的にどういうことですか? うまく言葉では表現しづらいのですが・・・ 今ほど携帯などが普及していなくて、もっと 「人同士の直接のコミュニケーションがあった時代」というか。 撮った写真をSNSにアップするのはパソコンと向き合う作業だし、SNSに「いいね!」がつく、それはオンラインで繋がるということ。だけど、撮影現場で「人を撮る作業」というのは、自分が言ったことに対する反応が、その場で直接返ってくるということ。その反応を撮るのはすごく楽しい。 人を撮る作業は、「人と人との直接のやりとり」。そこにアナログを感じますね。 _哲平さんの写真を見てると、人の笑顔や温かさ、柔らかさが伝わって来るな、と思うんですね。見ている人がHappyになるような。そういう写真を撮るようになったきっかけはありますか? ありがとうございます!そう感じてもらえるなら嬉しいですね。写真を研究してて「自分のスタイルってなんだろう?」と考えた時期があったんですね。そのとき、人のHappyが伝わる写真って、モデルの人に撮って見せたら喜んでもらえると同時に、撮ってる瞬間にアドレナリンが出ている自分がいると気付いた。「撮っている自分も幸せ」みたいなナルシスト的な部分もあるかも(笑) 「幸せを共有できること」に幸せを感じます。 家族を撮った1枚。YVRの近くの公園で撮影。 Q:海外での生活を決意したきっかけは? 入院生活を機に、一度きりの人生をこれからどう生きるか深く考えた。 _日本での仕事について教えてください。日本ではCM制作会社に勤務されていたんですよね。 はい、そうです。プロダクションマネージャーというプロデューサーの一つ前の職種で、仕事はCMの企画から撮影と仕上げまでに立ち会い、スケジュール管理と予算管理もするという幅広いものでした。多い時で100何十人のスタッフのお弁当を注文したりもしました。3年半ほど続けました。その経験を活かして、ワーホリ時代の最初の方は、BC州の観光局のリポーターもやりました。 CM制作会社での勤務時代 _CM制作会社で3年半。どうして辞めたんですか? 仕事は楽しかったんですが、ヘルニアが原因で手術と入院のため休職したんです。そのとき 「健康第一だな」と心底痛感した。 労働時間をもう少し少なくして、生活を楽しめたらいいな、というライフスタイルを考えた時に、一度海外を知ってみたいと思いました。けど、会社を辞める理由は完全に「現実逃避」だったと思う。会社を辞める時は自転車屋をやりたいと言って辞めました(笑)。だけど極端な話、今の時代、辛くて苦しくて自殺を考えてしまうくらいなら、現実逃避していいと思う。本気でそう思います。 海外に来たことは、僕にとって「自分は何が好きなんだろう?」とか、マインドをリセットして、自分のことを深く考えるきっかけになりました。 ワーホリ初期に撮影。サンセットビーチの夕焼けに感動していたが、気づいたら人を撮っていた。 _入院の経験が、転機になったんですね。バンクーバーを選択した理由は? 親戚がこっちに住んでいたのと、父の影響が大きいです。英語教師でUBCに留学経験があった父から、「ワーホリに行くならカナダでしっかりやってみては」と言われたので。 _フォトグラファーをプロでやっていこうと思ったきっかけは? 僕は2013年に結婚式を挙げたんですが、前撮りをフォトグラファーの「千葉実香子さん」にお願いしたんですね。 実香子さんが撮ってくれた結婚式の写真が、本当にとても素敵で感動しました。 そんな実香子さんが、ある時 「一緒にやっていきましょうよ!」と、背中を押してくれたんです。 その一言が、プロとしてやっていこうと思ったきっかけです。それまでは、自分がプロを名乗るなんてこれぽっちも思っていなかったです。日本だったら絶対名乗れていませんでした。 妻。いつもありがとう! Photo by Mikako Chiba Photography _プロのフォトグラファーになると決めたときの奥さんの反応は? 妻は、いつも応援してくれました。 撮影にしても何にしても、妻には本当に助けてもらって感謝しています! _今の哲平さんに影響を与えてくれた人は? 実香子さん、台湾人のウィリアム、そしてコリアンのNという、3人の写真家です。 まず実香子さんは、僕がプロとしてやっていくきっかけを与えてくれた人だからというのと、もう一つ尊敬するところは、編集のコツなどの自分の技術を出し惜しみせず教えてくれること。そして何より実香子さん自身からすごく生き方の良い影響を受けています。 ウィリアムは、僕が働いてた日本食居酒屋の写真を撮ってくれていた人です。店を辞めてすぐ、彼に「弟子入りさせてほしい!」と連絡を取って、どんどん撮影に同行して勉強させてもらいました。 撮影の裏側 Nからは、すごく刺激を受けています。ウィリアムからNを紹介してもらったのが交流のきっかけ。Nはアーティスト性の高い写真を撮る人で、僕と写真のジャンルは異なりますが、「Win-Winな関係」を大切にする考え方などが似ていると思っています。 _ウィリアムさんに弟子入りして同行した撮影では、思い描いていたのとギャップはありましたか? 意外とありましたね(笑)。 海外のお客さんの文化や価値観の違いが大きかった。 カメラの構成や花の色ひとつにしても、僕が「いいな」と思ったものが気に入ってもらえなかったり。カルチャーショックを受けて自信をなくしたこともありましたね。 でもそれも新しい発見!!それを自分の中で無理に変えたり合わせたりする必要はないと思うようになった。「自分がやれること」を大切にしています。 _撮影時に心がけていることは? 雰囲気づくりですね。 撮影前に事前打ち合わせして、必ず顔通しをします。その方のバックグラウンドやエピソードなどを聞いて撮影中に生かします。例えばこの間撮影したファミリーフォトなら、3〜5歳の子供なら必ず笑うマジックワード「うんち」とか(笑)。お子さんがいるファミリーフォト撮影の時には、妻が良い雰囲気を作ってくれたり。 それから、お客さんが希望する写真のイメージをきちんと共有するために、 常に「お客さんとのコミュニケーション」を第一優先にしています。 写真の技術がいくらあっても、カメラマン側がいいと思っても、お客さんが一番喜んでくれなければ意味がないですから。 バンクーバーブランドのGrantedさんとコラボ。モデルはバンクーバーで活躍するFloral designerとStylistをこなすKyokoさん 。 あとは、 空間を「共有」することですかね。 ウェディングフォトのように、すでに幸せな空間があれば、自分は自然に「入るだけ」。むしろ、写真を撮る自分は「空気」になるように心掛けています。 <<<次回は、田辺哲平さんの”海外”と”挑戦”に迫ります!>>> 田辺 哲平(Teppei Tanabe)Photographer Facebook:Tanabe + photography Instagram:Teppei Tanabe(@tanabe_plus) ☆撮影のお申し込み・お問い合わせ先 tanabeplus.photography@gmail.com <バックナンバー> 第一回 田辺哲平 Photographer〜海外で働く日本人が答える10の質問〜